こんにちは、MARCUS(マーカス)です。
あなた『プロジェクトの予算が完成しました』
上司『コストベースラインは、いくらになった?』
あなた『コストベースラインですか?! (って、なんだ??)』
そんなあなたの悩みにお答えます。
本記事の内容
その① コストベースラインとは?
その② コストベースラインの必要性・メリット
その③ コストベースラインの設定手順
この記事を書いているわたしは、建築・工事系のプロマネを13年以上経験しているPMPです。
プロジェクト毎に予算設定を担当していますので、自分の経験を踏まえて『コストベースライン』についてわかりやすくご説明します。
目次
その① コストベースラインとは?
結論ですが、コストベースラインとはPMBOKで定義されている『コンティンジェンシー予備を含む時間軸ベースのプロジェクト予算』のことです。
コンティジェンシー予備とは、事前に想定されたリスクへの対処のために準備された予備の予算や期間のことです
これから噛み砕いてお話しますので安心してくださいね
プロジェクトマネージメントの教科書とも言われる『PMBOK(Project management body of knowledge)』では、コストベースラインについて以下のように定義しています。
コストベースラインは時間軸ベースのプロジェクト予算の承認版であり、マネージメント予備を含まない。コストベースラインは、正式の変更管理手順を経た場合のみ変更される。それは、実際の結果と比較する基礎として使用される。コストベースラインは、さまざまなスケジュール・アクティビティの承認済予算の合計として作成される。
PMBOK第六版 P.254
ちょっと余談ですが、、、
PMBOKは英文でかかれた原文を和訳したものですので、日本人からすると言葉の使い方に少し違和感がありますが、ただPMBOK全編を通してこの感じですので、プロジェクトマネーメントを学習するためには慣れるしかありませんね。
PMBOKで定義されているポイントは大きく2点あり、『コストベースラインとプロジェクト予算との違い』を明確にしています。
2つのポイント
①時間軸ベースのプロジェクト予算である
②コストベースラインはマネージメント予備を含まない
①時間軸ベースのプロジェクト予算
コストベースラインは、スケジュールの進み具合に合わせて毎月や4半期毎といった期間でどのくらいの予算を必要か、がわかるようになっています。
では『どうしてスケジュールに合わせて必要な予算がわかるようになるのでしょうか?』
それは、ベースラインの設定方法で納得できますのでご説明します。
✓コストベースラインの設定方法
コストベースラインは『スコープ・マネージメントで作成されるWBS(Work Breakdown Structure)』に沿って考えられます。
WBSで規定したそれぞれのアクティビティに必要となる予算を算出して『それらを合計したものがコストベースライン』になるためです。
WBSとはプロジェクトで行われるタスクを作業分解して、詳細化したもののことで、『そのプロジェクトで行われる作業の最小単位がアクティビティ』です
WBSは同時に『プロジェクトスケジュールの作成』でも使用されます。
縦軸にWBSのアクティビティをリスト化し、横軸にそれぞれの作業に必要な所要時間を見積もり、日数をガントチャート化することでプロジェクトのスケジュールを作成します。
それぞれのアクティビティに必要な予算がわかって、スケジュールではその予定作業日も合わせてわかるという具合です。
ということは、各アクティビティの予算と期間が同時にわかるということですので、来月に実行される予定のアクティビティがわかれば、その月で使われる費用がいくらになるのか、ということがわかるようになりますよね。
『それぞれのアクティビティ作業で’’コストとスケジュール’’が直結している』ということです
このことが『時間軸ベースのプロジェクト予算』と言われる理由になります。
②コストベースラインはマネージメント予備を含まない
マネージメント予備を含まないところが、プロジェクト予算との大きな違いです。
コストベースラインとプロジェクト予算の違い
①コストベースライン=コスト+コンティジェンシー予備
②プロジェクト予算=コストベースライン+マネージメント予備
マネージメント予備とは、事前に予測していなかったリスクのために用意しておく予備費用のことで、言わば使う予定のなかった予算です。
コストベースラインは『時間軸ベースのプロジェクト予算』ですので、いつ使うかわからない、時間軸ベースで管理できない予備費用は含まないということになります。
いつ使うのかわかっている予算が『コストベースライン』、そこに不測の事態に備えてマネージメント予備を足したものが『プロジェクト予算』ということです。
『コストベースライン』に『マネージメント予備』を足すと、『プロジェクト予算』になる!と覚えてくださいね。
その② コストベースラインの必要性・メリット
コストベースラインの必要性とメリットは以下の通りです。
ポイント
①必要性:計画途中の予算使用状況が適正かどうかがわかる
②メリット:今後の予算について将来予測が可能になる
内製にしろ、外注にしろ、発注金額だけを見て進捗に合わせた予算をあまり気にしないプロマネが結構多いと思います。
ですが、工程の遅れ挽回や仕様の追加・変更への対処に関して後出し的な費用請求を許容してしまっている契約条件の場合には、『気がつたら請求金額が膨らんでいた』なんていうリスクが高くなり危険です。
予算内でのプロジェクト完了させるために、コストベースラインのメリットが大きな武器になるのでしっかりその効果を活用してくださいね。
①必要性:計画途中の予算使用状況が適正かどうかがわかる
コストベースラインは、プロジェクトのパフォーマンスを評価する指標(ベース)の一つになります。
コストベースラインの他には、スコープベースラインやスケジュールベースラインがあり、パフォーマンス測定の指標としてそれぞれ使われます
プロジェクトの進み具合に合わせて、すでに使用された予算が適正であるのかどうかをコストベースラインで確認することができます。
以下を例にして、その確認方法をご説明しましょう。
(例)スケジュール・アクティビティ
①作業A:30日間(予算:100万円)
②作業B:50日間(予算:150万円)
③作業C:60日間(予算:200万円)
④現在は、作業開始後60日が経過したところと仮定
それぞれのアクティビティが作業完了に合わせてA⇒B⇒Cと進んでいく場合、予定通りであれば作業Bが60%完了しています。
60日間で使用している予算は『コストベースラインでは100万円(作業A:100%)+90万円(作業B:60%)=190万円』であるはずです。
この【190万円であるはず】をベースとして実際の作業の進み具合と予算の消化状況を比較することで、プロジェクトコストのパフォーマンスを評価することができます。
例えば、
①作業が遅れており作業Bがまだ40%(予定より20%遅れ)しか完了していないが、作業人員は当初の予定人員で60日間作業しているので消化した予算は予定通りの190万円となっている(完了した作業量に対して予算を使いすぎ)。
②または、予定通り作業A:100%、作業B:60%が完了しているが、作業Bで発生した突発トラブルに対処するため、予備費を使ってしまい現在消化した予算は210万で、ベースラインの190万円を20万円超過してしまっている。
【作業が遅れていて予算超過】【進捗が予定通りでも予算超過】などいくつかの予算オーバーの状況が想定できます。
ですが、コストベースラインでパフォーマンスを定期的に評価していれば被害が大きくなる前に異常を発見することができ、その場で対処することで被害を最小限とすることが可能です。
予算が予定より多く使われていても、作業が進んでいれば問題ありませんからね!
一見すると予定通りの予算消化だが、完了した作業量からすると時間軸ベースでは予算を超過していることに気がついた。
そんなことができるのは『コストベースラインだからこそできるパフォーマンス評価』だと言えます。
②メリット:今後の予算について将来予測が可能になる
スケジュールの進み具合に合わせてどのくらいの予算が毎月必要になるのかがコストベースラインではわかるとご説明しました。
『当初計画した予算と実際に使った予算の差』をプロジェクトの途中で比較すれば、残りの期間にかかる予算を事前に予測することも可能です。
(例)コストベースラインで以下を確認
①全体日程の50%が過ぎたところ
②作業進捗は45%で当初予定よりも5%遅れている
③ここまでに使った予算は全体予算の60%を消化
作業量が45%なのに、予算を60%消化してしまっているので明らかに計画よりもコスト超過の状況です。
しかしそんななかでも今後プロジェクトを期限内の完了させるためには、5%の作業の遅れを取り戻さなければなりません。
遅れを取り戻す方法としては、人員の追加や外注業者への作業の外出しなどが考えられますが、いずれも追加コストの発生が予測されます。
まだ計画を50%過ぎたところですが、目標期間で完了させるためには『予備予算を切り崩すのか、もしくは追加予算を申請するのか、といった検討を今始めなければいけない』ということも同時にわかります。
コストベースラインであればこそ、計画途中での予算消化の妥当性を評価することができ、また合わせて計画完了までに必要なる予算を事前に予測することができるということです。
コストベースラインの隠れたもう一つのメリットして、もし追加予算が不要なるような場合でも、早めにその可能性をステークホルダーへと情報を発信できるので’’ネガティブサプライズ’’が無くなり、プロジェクトへの満足度向上も期待できることを付け加えておきます(経験談)。
その③ コストベースラインの設定手順
コストベースラインは『PMBOKのコストマネージメントのプロセス』で作成します。
コストマネージメントのプロセスは、スコープマネージメントのWBSをベースに進めますのでWBSを事前に完成させておいてください。
具体的な手順は以下の通りです。
①コスト見積
それぞれのアクティビティに必要な概算見積を得る
②予算の設定
アクティビティ見積を集約するプロセス
①コスト見積
見積もりをする時点でわかっている情報をベースに、アクティビティを完了させるために必要な資源に対するコストを予測します。
ここで言う資源とは、労力・資材・装置・サービス・施設のほか、インフレ・為替・コンティンジェンシーなども含まれ、発生するであろうコストをできる限り予測、想定してください。
内製か外注か、買い取りかリースかなどの判断や計画中に発生するかもしれないリスクなども過去の記録や知見を元に考慮しなければなりません。
コスト見積もりの精度は、前提条件が変更となった場合や計画が進み新たな情報がわかった時点でどんどん見直し、精度を上げていきます。
プロジェクト計画初期の段階では、不明確なことが多くコストを予測しても超概算となる場合が多く、妥当性が低い場合がほとんどです。
最新の情報を元に定期的にコスト見積もりを見直すことで、コストベースラインの信頼性を上げることができます。
コストベースラインの信頼性を担保するため、見積もりの条件や根拠を明確に書面で残しておくことも合わせて忘れないでください。
②予算の設定
コスト見積もりでそれぞれのアクティビティ完了に必要な予算がわかりましたので、それらを集約しコストベースラインを完成させます。
コスト見積もりはWBSをベースに作成しますが、予算の設定では各コストをコストベースラインに集約するために、コストの発生時期も特定しなければなりません。
予算の設定プロセスを実行する前に、スケジュールマネージメントのプロセスで事前にWBSをスケジュール化しておいてください
コストベースライン作成の事前準備
①WBS→アクティビティのコストを見積もり
②スケジュール→コストの発生時期を特定する
各アクティビティに必要なコストをスケジュールに合わせて発生時期を特定する、そうすることで『時間軸ベースの予算となるコストベースライン』を完成させることができます。
まとめ
本記事の内容
その① コストベースラインとは?
その② コストベースラインの必要性・メリット
その③ コストベースラインの設定手順
今回は、『コストベースライン』について説明しました。
コストベースラインは、プロジェクトの三大管理要素(Q:品質、C:コスト、D:納期)のコストパフォーマンスを評価するベースとなる指標です。
もう一度おさらいしますと、その最大のメリットは、コストの妥当性と将来予測が同時に確認できると言う点です。
プロマネにとっては、『超』が何個もつくほど重要な管理指標の一つですので、今回の記事でその意味やメリットをよく理解して活用してくださいね。
それでは、今回は以上です。