こんにちは、MARCUSです。
『品質マネジメントって具体的にどういうこと?』『品質マネジメントの注意点は?』『具体的なプロセスは?』
そんなあなたの疑問にお答えします。
本記事の内容
①プロジェクト品質マネジメントとは?
②プロジェクト品質マネジメントの注意点
③プロジェクト品質マネジメントのプロセス【PMBOK】
プロジェクトの三大管理要素ってご存じですか?
答えは、『品質(Quality)』『コスト(Cost)』『納期(Delivery)』になります。
それぞれの英語の頭文字をとって『QCD管理』とも呼ばれます。
約束したQCDの目標を守りながら、なおかつ、プロジェクトを最終的な目的達成まで進める作業が『プロジェクトであり、それを管理することがプロジェクトマネジメント』と言い換えることもできますね。
コスト・納期を守ってプロジェクトを完成させてとしても、要求よりも低い品質の成果物を納品したのでは、クレームによる手直しコストや再納品による納期の遅延などが発生してしまうリスクが高くなります。
成果物の品質が良くないと、結局はコストも納期も守れなくなるってことですよね
品質クレームの程度によっては、全ての目標が守れないという最悪の結果になってしまうかもしれないので、QCD管理で優先すべきなのは、まずは『品質マネジメント』です。
今回は、『プロジェクトの品質マネジメント(Q)』について説明していきます。
この記事は、10年以上海外で建設系プロマネをしている私@PMPが書いていきます。
目次
①プロジェクト品質マネジメントとは?
プロジェクトの品質マネジメントとは、読んでそのまま『要求されたプロジェクト、プロダクトの品質目標を達成するために行うマネジメント活動』のことです。
また、プロマネの教科書『PMBOK』では、以下のようにも書いています。
プロジェクト品質マネジメントは、ステークホルダーの目標に合致するために、プロジェクトとプロダクトの品質要求事項の計画、マネジメント、及びコントロールに関する組織の品質方針を組み込むプロセスからなる。プロジェクトの品質マネジメントはまた、母体組織のために展開される継続的なプロセス改善活動を支援する。
PMBOK プロジェクト品質マネジメント
▼『PMBOKってなに?』という方は、こちらの関連記事をまずはどうぞ!
『PMBOKの10の知識エリアの一つである品質マネジメント』では、計画・実行・コントロールのプロセスを通じて、要求レベル以上となるように成果物のパフォーマンスをマネジメントしていきます。
主なプロセスと内容は『5つのプロセス』を通して以下のようになります。
①品質マネジメントの計画(計画プロセス)
品質要求事項、品質標準を順守するための方法を文書化するプロセス
②品質のマネジメント(実行プロセス)
品質方針をプロジェクトに組み入れて、品質マネジメント計画を実行可能な活動に転換するプロセス
③品質のコントロール(監視・コントロールプロセス)
パフォーマンスを査定し、顧客の期待を満たすことを保証するために活動の結果を監視記録するプロセス
ひとことで各プロセスを言い表すと『品質目標達成のための検査基準・測定方法を決め(計画)、決めたプロセス・頻度で成果物を検査し(実行)、その測定結果を確認する(監視)』という流れです。
PMBOKでは個別のプロセスが明確に規定してありますが、業界や企業によってはISO9001などをベースに独自の基準・管理プロセスを採用している場合もありますので、計画を始める前に確認が必要です。
②プロジェクト品質マネジメントの注意点
私の経験を元に特に注意した方がよいことをシェアします。
急がば回れ!
顧客からの品質要求がいつも以上に高かった場合、成果物の作成や評価に当初の計画よりも多く時間がかかってしまうことがよくあります。
そのまま何も対策を立てずに作業を進めてしまうと、作業に時間がかかったり、検査基準を満たせなかった場合には手直しが入ったりと、スケジュールが遅れる可能性がどんどん高くなってしまいます。
その場合、考えられる対策としては、『過剰な進捗管理、長時間の残業など』がすぐに思いつきます。
しかし、プロジェクトチームに過度なプレッシャーや長時間労働を強いるようなことは止めるようにしましょう!
なぜならコストが増加するだけではなく、従業員の退職、エラー、または手直しを増加させることにつながり、プロジェクトの全体リスクを高めてしまうためです。
「じゃあ、どうすれば良いの?」と聞かれそうですが、その対処は実は単純です。
プロジェクトで認可された予算や納期に対して、品質要求が高いとわかった時点で予算の増額や納期の延長を承認者やステークホルダーに交渉することでしか対策できません。
要求レベルの高い・厳しいプロジェクトであればあるほど、目標を達成するには適正な時間が必要です
スケジュールの遅れを取り戻すために品質検査を急いで、エラーや品質欠陥の見逃しなどがあると顧客クレームにつながり、手直し対応や再納品など、当初の遅れよりもさらに大きなロスにつながるリスクが大きくなります。
Q・C・D管理というように『まずは確実な品質を確保した上でのコストであり、納期』です。
確実な品質の成果物を納品できるよう、『急がば回れ』でマネジメントすることを心がけてください。
検査よりも予防!
プロジェクト実行後に検査で品質上の課題を見つけるよりも、実行前の品質設計を十分に行い、欠陥を予防する方がはるかにコストを削減できます。
不良が発生した時の不良コストは、内部コスト(プロジェクトチームが発見したもの)と外部コスト(顧客が発見したもの)に分けられますが、一般に顧客が欠陥を見つけてしまった場合にもっともコストがかかります。
製品保障上の問題や自社の評判の損失に関わるロス、手直しのコストといった具合ですね
その中でも『自社評判の損失は将来のビジネスにも影響を及ぼします』。また失った企業イメージを取り戻すための広報費や社内改善にも大きな予算や労力が必要になってきます。
検査で品質欠陥を発見することを優先するよりも、品質設計に十分時間と取って欠陥の少ない成果物を作ることの方に集中した方が外部への欠陥流出リスクの低減につながり、ロスコストを削減できます。
自社のブランドイメージを守り、なおかつ不良コストの削減にもなる一石二鳥のマネジメント方針ですね!
③プロジェクト品質マネジメントのプロセス【PMBOK】
品質マネジメントの計画
まず、PMBOKでは『品質マネジメントの計画』を以下のように書いています。
品質マネジメントの計画は、プロジェクトおよびその成果物の品質要求事項や品質標準を特定し、プロジェクトでの品質要求や品質標準を順守するための方法を文書化するプロセスである。
PMBOK 品質マネジメントの計画
『品質マネジメントの計画で決めること』を書き出しますと、以下の通り。
①成果物の品質目標値を特定する。各プロセスでの目標値と成果物の最終目標に分けて決める。
②検査の方法、タイミング、頻度、合格値、不合格時の対処方法を決める。
③各プロジェクトスタッフの役割と責任を決める。
④レビュー会議のタイミングや時期、参加者などを決める。
※5W1Hを明確にすることを注意しながら、文書にしていく。
それでは、それぞれ説明していきます。
▼プロジェクトマネジメント計画書の書き方については、こちらの関連記事をどうぞ!
①成果物の品質目標値を特定する
はじめに、プロジェクト憲章やスコープベースラインなどから『顧客が要求している品質目標』を特定しましょう。
最終的な『成果物の完成受入れの基準』となりますので、数値で測定可能な目標値であることが必須です。
なおかつ、その数値を満たすことで『顧客が満足する結果となる』ことも前提になります。
例えば、顧客からの要求が『このプロジェクトを通して、売り上げ拡大・利益向上につなげたい』というような漠然としている場合です。
売り上げや利益をどのくらい増やしたいのか、それにはどの商品を何個売ればよいのか、その商品の売価を上げる必要があるのかないのか、といった具合に漠然とした顧客のイメージを数値で具体化していきます。
数値目標でないと、成果物受入れ時に受け入れてくれないというリスクが出てくるためです
しかし、測定可能な数値目標であっても、あまりにも高い目標だとコストやスケジュールの増加につながってしまいます。
顧客が品質目標にこだわった場合、承認されている予算や納期は増額、延長が可能なのかも合わせて話し合うことが求められます。
プロジェクトの内容で達成可能な数値なのかどうか、妥当性の検証も行うということですね。
要求だけ高くて、金も時間もない!ではそのプロジェクトは開始の段階で無理ゲーですよ。
作業中の各プロセスで中間検査が必要な場合は、その品質基準も設定します。
最後になって成果物の品質が不合格となることを予防するためにも、中間検査は大切です。
早期に品質異常を発見することは、コストやスケジュール遅れの最小化につながるので、最終的にプロジェクトの成功確率を高めることにもなります。
②検査の方法、タイミング、頻度、合格値、不合格時の対処方法を決める。
品質目標を達成するために『いつ、どんな方法で検査をするのか』について決めていきます。
検査結果の合格・不合格の基準、もし、品質不合格となった場合の処置などを文書で明確にしてください。
文書化の方法としては、文章や図表を使うことが多いですが、品質管理プロセスにおいてはフローチャート等で検査の流れ、担当者、合否判断後のアクションなどがまとめられることが一般的です。
この時点で5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識して文書化できれば、次の手順にあるスタッフの役割と責任に関しては省略しても大丈夫ですよ。
③各プロジェクトスタッフの役割と責任を決める。
検査の方法を色々決めても、誰が責任をもって実行するのかが決まっていないとうまく機能しません。
作業の進捗を報告する人、検査する人、検査結果を判断する人など企業や組織のルールに合うように責任を分担し、明確にしてください。
品質マネジメントの計画で作成したフローチャートの各項目にスタッフの名前をそれぞれ記載するようにすれば、漏れなく役割を分担することができます。
④レビュー会議のタイミングや時期、参加者などを決める。
レビュー会議は『作業の進捗や検査結果を関係者に周知するために役に立ちます』。
また、状況を常に共有することは『ステークホルダーの満足度を高める効果』もあります。
定期的に開催するために、その日時やタイミング、参加者などを事前に決めましょう。
レビュー会議のタイミングは、プロジェクトスケジュールのマイルストーンに合わせるか、もしくは、レビュー会議自体をマイルストーンとして運用すると忘れずに開催することができますよ。
最新の状況をレビューするとともに、検査結果に異常があった場合にはその対策、担当者、期限などもその場で決定し、品質マネジメントの活動が停滞しないようにフォローアップしていきましょう。
品質のマネジメント
品質のマネジメントでは実行プロセスに移り『品質マネジメントの計画を実際のプロジェクトに組み入れ、運用を開始する』ことになります。
期待される主な効果としては『品質目標がプロセス内で達成されていることを確認すること』になりますが、同時に測定された検査データから品質保証ツールや技法を通して『今後の品質予測もすることも可能』です。
プロジェクトチームは、品質保証部門の協力をもらって品質マネジメント活動の一部を実行することになります。
品質保証スタッフは品質管理の経験が豊富でプロジェクトにとって貴重な資源ではありますが、品質のマネジメントのプロセスでは作業を任せきりになる傾向もあります。
品質のマネジメントは『全員参加の活動が原則』です。
役割や責任はプロジェクトごとに変わってきますが、品質保証のスタッフに任せきりにするのではなく、プロジェクトチームのスタッフ一人ひとりが『品質は自分の責任』と感じるような品質管理の計画を立てることも重要です。
そうすることで成果物のパフォーマンスの向上につながり、結果的に全員参加で効率的に目標達成が可能になります。
品質のコントロール
PMBOKでは、以下のように書かれています。
品質のコントロールは、パフォーマンスを査定し、プロジェクトのアウトプットが完全かつ正確で、顧客の期待を満たしていることを保証するために、品質のマネジメント活動の結果を監視し、記録するプロセスである。
PMBOK 8.3品質のコントロール
最終的な顧客の受け入れに向けて『プロジェクトの成果物が品質要求を満たしていること』を検証します。
実行プロセスとなる品質のマネジメントで蓄積された検査データをチェックシートやマトリクス上にまとめて、最終成果物の品質が間違いなく、顧客の要求している品質目標を満たしていることを正式に報告します。
品質のコントロール自体は、プロジェクト全体を通して実行プロセスで測定された検査データの検証という形で進められますが、主目的として検査データのまとめを正式に提出するための報告書作成と考えてよいでしょう。
『品質マネジメントの計画』『品質のマネジメント』『品質のコントロール』、3つのプロセスを通して成果物のパフォーマンスを計画・検査・保証し、受け入れのための品質を担保するプロジェクトマネジメント活動です。
まとめ
本記事の内容
①プロジェクト品質マネジメントとは?
②プロジェクト品質マネジメントの注意点
③プロジェクト品質マネジメントのプロセス【PMBOK】
今回は、『プロジェクト品質マネジメント』についてお話しました。
成果物のパフォーマンス、性能、品質の確認は言うまでもなく、予算・スケジュールに並ぶプロジェクト内における重要な管理項目の一つです。
個人的にQCD管理で優先すべきは、まずは品質(Q)!約束した品質を達成するための制約条件として、予算(C)、納期(D)があると思っています。
ですので、予算だ!納期だ!と騒ぐ前にまずは『品質マネジメントを通して、成果物が要求目標に達する・達しているということを確実にする』をくれぐれも忘れないでくださいね。
それでは、今回は以上です。