PMBOK PROJECT MANAGEMENT

プロジェクト憲章とは?【サンプル付きで目的と内容をわかりやすく説明】

2020年11月14日

プロジェクト憲章とは?

こんにちは、MARCUS(マーカス)です。

「プロジェクト憲章ってなにかよくわからないし、書き方も知らない」「なにがそんなに重要なの?」

そんなあなたの質問にお答えます。

本記事の内容

その①プロジェクト憲章とは?
その②プロジェクト憲章の書き方
その③プロジェクト憲章と前提条件ログ

PMBOKガイドブックに従って、プロジェクトマネージメントを開始すると、1番はじめに作成することになるのが「プロジェクト憲章」ですね。

「憲章」なんて聞き慣れない単語を言われても、実際なにをすればいいのか正直ピンと来ないというのが、正直なところでしょうね。

今回は、そんな「プロジェクト憲章」についてご紹介します。

「なぜ重要なのか」「書き方のサンプル」もご紹介しますので、読み終えれば、すぐにプロジェクト憲章が書けるようになると思いますよ。

それでは、プロマネ歴12年でPMPのわたしが書いていきます

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プロジェクト憲章とは?

一言でいうと、プロジェクト憲章は「プロマネの任命書」です。

プロジェクト憲章の作成は、プロジェクトの存在を正式に認可し、プロジェクト活動に組織の資源を適用する権限をプロジェクトマネージャーに与えるための文書

PMBOK第6版 4.1プロジェクト憲章の作成

なぜかというと、プロジェクト憲章には主要な関係者が記載されますが、そこで「プロジェクト・マネージャーの名前」がはじめて出てくるからです。

プロマネを任命するということは、「これから何らかのプロジェクトを開始しようというオーナー側の意思表示」というふうにも取れます。

今まで会社や組織のなかで、「事業発展のために何をしたら良いか?」と考えていたオーナーや役員が「よしっ!このプロジェクトをやるぞ!」という方針をはじめて外部に示した資料が、プロジェクト憲章です。

ですので、プロジェクト憲章は「プロジェクトのオーナーやスポンサーが、プロジェクトの発足を正式に認可して、プロマネに計画実行のための権限あたえる資料」という意味がわかりますね。

✓なぜプロジェクト憲章が重要なのか?

それは、プロジェクト開始時の「大方針」が書かれているからです。

プロジェクトプロセスで唯一、計画を実行することになったビジネス上の背景やその目的が書かれているというのが、1番大きな理由ですね

計画を実行すると、本当にいろいろな問題やトラブルが起きて、そのたびにプロマネやチームが対応策を判断して、対処していくことになります。

その時に、プロマネやチームの道標になるのが「プロジェクト憲章」です。

プロジェクトの成功が、「ビジネスや事業にどういった貢献をするのかについて深く理解しておくこと」で、判断の方向性を間違えずにすみます。

「なぜ自分たちがこのプロジェクトをやっているのか?」という根本的なところを理解していないと、自分勝手な判断で道を間違えかねませんよね。

ですので、プロジェクトを実施する理由「Why」について書いてある唯一の資料ということで、プロジェクト憲章はとても重要です。

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✓プロジェクト憲章は「だれが・いつ」書くもの?

だれが⇒プロジェクトオーナーやスポンサー
いつ⇒プロジェクトマネージャー任命前

とPMBOKでは言われています。

しかし、実際にところは「まずは、プロマネが任命される⇒プロマネがオーナーなどと打合せをして情報を収集する⇒プロマネ自身がプロジェクト憲章を書く⇒オーナーや承認者に承認してもらう」というケースが多いです。

しかし、プロマネが憲章を書くことには実は大きな利点があり、

  • オーナーやスポンサーから直接、プロジェクトへの思いを聞ける
  • プロジェクトの目的、目標、期待される利益を深く理解できる
  • 期待に答えるため、計画の優先作業や注意点を事前に洗い出せる
  • それにより、活動への資源を効率よく割り当てできる


といったことがあります。

誰でも決まった計画をただ言われて実行するよりは、自分も一緒になって作り上げた計画のほうが「やりがい」「責任感」が増します。

モチベーション・やる気が、プロジェクト成功の確率を大きく高めます

ですので、出来ればできるだけ「憲章の作成前」にプロマネに任命してもらえるように交渉することをオススメします。

プロジェクトに初めから終わりまで関われる、プロマネの特権ですよ。

プロジェクト憲章の書き方サンプル

プロジェクト憲章は、「ハイレベルな表現で成果物・スケジュール・プロジェクトに関わる全員の役割と責任をステークホルダーに確実に理解させる」ために書きます。

ハイレベルとは、詳細に分解される前の「大まかな」ということ

プロジェクト憲章に書く内容は、以下の通り。

プロジェクト憲章目次

  • プロジェクトの目的
  • 測定可能なプロジェクトの目標
  • プロジェクトの成功基準
  • ハイレベルの要求事項
  • ハイレベルのプロジェクト内容、範囲
  • 主要な成果物
  • プロジェクト全体のリスク
  • マイルストーン・スケジュール
  • 事前に承認されている予算
  • 主要ステークホルダー(関係者)・リスト
  • プロジェクト承認要求事項
  • プロジェクト・フェーズの終了基準
  • プロジェクトマネージャーの責任と権限レベルダミーテキスト

プロジェクト憲章は、作業が始まる前に「大きな方針を固めること」を目的に書きます。

ですので、大まかな表現で良いのでプロジェクトのオーナーなどの要求事項や作業内容を書くことで、関係者全員に方針を理解してもらいます。

最初の一歩が足並み揃わないと、作業を開始したときに全然見当違いな方向にチームを進めかねないので、ここでしっかり目的や期待されている内容を固めましょう。

✓プロジェクト目標は必ず「測定可能な」数値にすること

「測定可能な目標」でないと、プロジェクトが成功かどうかわからなくなるからです。

わたしが実際に失敗したプロジェクトの経験です。

わたしは工事関係のプロマネをしているので、「古くなった事務所の内装をリノベーションする改装工事」を担当したことがありました。

この時は、「内装デザインのコンセプト提案」から目標をして作業範囲になりました。

ようは、「完成イメージ」も目標の一部になったということです。

壁・床のデザインや材料、机や椅子などの内装品を1つづつカタログやサンプルで、施主に確認してもらいながら慎重に工事を進めていきました。

工事も終盤に近づいた時に、施主が工事現場で「イメージと違う、カタログやサンプルはこんな感じじゃなかった、工事を中断してほしい」の一言。

通常の内装工事であれば、材料は施主が選んだものを使うので、イメージが違うという理由での工事中断はありません。

ですが、あのプロジェクトでは「落ち着きのあるなかにもモダンな雰囲気という内装コンセプトまで成功基準となっていた」ので「イメージと違う!」と言われると、作業を止めるしかありません。

その後、施主とは協議を繰り返しましたが、最終的には購入した材料の一部を再発注し、交換することで作業再開させることになりました。

このプロジェクトからの教訓は、まさに測定不可能な「人の見た目という主観」がプロジェクトの目標になっていたことです。

家具の数量や工事の日程など「測定可能なものだけをプロジェクト成功の目標」として進めていれば、工事中断というようなことは避けられたでしょう。

ですので、プロジェクトのスムーズな完成引渡しのためには「測定可能な数値化できる目標を立てること」が大切だということです。

人の感覚や主観によるものは、努力目標として書いて、努力はするが成功基準とはないことをはっきりと書いておきましょう。

✓リスクは想定できることを伝えておく

なぜかというと、「人はネガティブなサプライズが嫌い」だからです。

何の前触れもない悪いニュースに、人は感情的になりやすいです

プロジェクト開始のときは、「これから頑張ろう!」という雰囲気がありますので、「どうしてもネガティブなことは口に出しにくい雰囲気」があります。

ですが、初めのうちに想定できるリスクについて伝えておくことは、あとでトラブルが起きた時に、「関係者のサプライズを防ぐこと」が出来ます。

実際、問題が起きた時に「実はあの時、すでにリスクを想定していました」なんて言っても、「なぜその時言わなかったんだ!」と言われるだけで何のメリットもありません。

プロジェクトの概要を聞いた時にあなたが思いつく心配については、明確に関係者に伝えて、プロジェクト憲章に書くようにしましょう。

✓責任の前に「権限」を与えてもらおう

プロマネは、プロジェクトの成功に責任を負います。
でも、重大な責任の前に「十分な権限」を手にすることが重要です。

プロマネの「責任」「権限」がつり合っていないと、プロジェクトがうまく進まず、目標を達成できない可能性が高くなるからです

特に必要なのはどこからも圧力を受けずに「提案できる権限」ですね。

・チームにほしい人材を役員や上層部に提案する
・コストやスケジュールの変更などを提案する
・目標達成のために、必要な施策を提案する


などを「意思決定者に自由に提案できる権限」です。

当然、プロマネとしてプロジェクトを管理する権限などは認めてもらうようにします。

それと同時に「提案できる権限」がないと、あなたが自分で考えて、納得した資源や方法でプロジェクトを進めることができなくなります。

わたしなら、プロジェクトの成功に「責任」を追うには自分の裁量で計画を進められないと、とても責任は取れないですね。

ですので、自由に意思決定者に発言する「提案できる権限」は大切ですよ。

プロジェクト憲章と前提条件ログ

見落とされがちですが、重要なことです。

プロジェクト憲章作成時には、「前提ログ」も作成しましょう

憲章に書く項目のなかで、「前提条件」には注意してください。
前提条件がかわると、「プロジェクト計画の根底が覆される」ことになります。

例えば、道路建設工事の場合を例にしてご説明します。

まず、プロジェクト開始の準備として、新しく道路を作る場所の「土地を所有者から購入する必要がある」とします。

この土地購入を他の会社が担当することになり、「購入契約は工事開始前に終わるという約束」がされました。

あなたは「道路工事開始時には、土地の購入が終わっているはず」という前提条件を元に、工事のスケジュールを作成していくことになります。

この前提条件は、どうでしょう。

もし、土地の購入が工事開始までに終わらなかった場合、工事が開始できずにプロジェクトのスケジュールが遅れます。

あなたの計画は、「前提条件の変化によって」いきなり変更を余儀なくされます。

「◯◯◯◯のはず」「△△△△になるはず」といった確約のない予測や推定条件のことが「前提条件」です

プロジェクト憲章の「前提条件を元に全ての方針・方向性」が決まります。

ですので、「前提条件ログ」も作成して「前提条件に変更がないことを注意深く監視すること」は、目標達成のためには大切なことだと言うことがわかります。

まとめ プロジェクト憲章とは?【その目的と内容をわかりやすく説明】

ポイント

その① プロジェクト憲章とは?なぜ重要なのか
その② プロジェクト憲章の書き方
その③ プロジェクト憲章と前提条件ログ

今回は、プロジェクト憲章について、ご紹介してきました。

海外で仕事をしていると、「プロジェクト憲章」は日本よりもどちらかというと海外のプロジェクトでの方が重要視されているように感じます。

必ず憲章のレビューや再チェックというプロセスがありますし、その重要性が何度も計画中に確認されます。

業界によっては、契約書や見積書がプロジェクト憲章の代わりとされている場合もありますが、「ビジネス上の目的や前提条件」などまで記載されることは稀だと思います。

ですので、ぜひプロマネに任命されたら計画への理解を深める意味でも「1から自分でプロジェクト憲章を作成すること」をオススメしますよ。

それでは、今回は以上です。

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