こんにちは、建設系現役プロマネのMARCUSです
『良く出来た計画と十分な資源があっても、プロジェクトが遅れる理由は何なのか?』
『始めは順調なのに、プロジェクトが進むとだんだん遅れてくるのはなぜなのか?』
そんな疑問に、PMPの資格を持つMARCUSがお答えします
我々には過ぎた時間は取り戻せません
工程管理がプロジェクト成功の鍵です!
目次
余裕のあるスケジュールだとプロジェクトは遅れる!
結論から言うと、『スケジュールに余裕がある』とプロジェクトは遅れます!
理由はこの3つです
- 『学生症候群やパーキンソンの法則』という落とし穴
- マルチタスクが作業効率を上げるという間違い
- 連動したプロセスで雪崩式に全体が遅れる
それでは、説明します
この場合は違います
今回はプロジェクトが順調そうに見えるのに、なぜか遅れるというケースです
予想しなかったトラブルでプロジェクトが遅れたという場合にはリスク管理の見直しやステークホルダーの管理改善などの違った対策が必要です
スケジュールに余裕があるとプロジェクトは遅れる!
『学生症候群』や『パーキンソンの法則』という言葉を聞いたことがありますか?
『学生症候群』→スケジュールに余裕があっても人はギリギリにならないと始めない
『パーキンソンの法則』→仕事の量は与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
みなさんもこんな経験有りませんか?
夏休みの始めの頃はまだ時間があるからと宿題を後回しにしてしまい、結局、8月末のギリギリになってから泣きべそをかきながら宿題を終わらせた
同じような議題の会議を朝一から始めるとダラダラと昼間まで会議が続くのに、定時5時の1時間前から会議を始めるとぴったり1時間で定時に会議が終わる
どちらも完璧な計画や仕事量には関係なく、『人の心理』から来る現象です
プロジェクトで例えれば、こんな状況です
あなたは、作業Aの完成に必要な作業時間を【10日間】と見積もりをします
プロマネが必要な時間を聞いてきたので、余裕時間2日間をみて【12日間】と答えました
プロマネはあなたが12日間で作業を完成させるということに期待しながらも念の為に、さらに3日間の余裕をみてスケジュールには【15日間】と作業期間を記入しました
この時点であなたは作業時間10日+【5日間の余裕】があり、作業完成には十分なはずです
作業Aを始めなければならない日が来ましたが、あなたはまだ他の仕事をしています
すぐに作業Aに取り掛からなければいけませんでしたが、まだ5日間の余裕があるので大丈夫と自分で判断し、特にプロマネに報告することもなくすぐに取り掛かりませんでした
他の仕事に思ったより時間がかかり、作業Aの完成は1日遅れとなってしまった
また違うパターンではこのような場合です
あなたはすぐに作業Aに取り掛かり、予定通り10日後には指示内容は完成できそうです
ところが、プロ意識の高いあなたは指示されてはいない内容について、こうした方がより良いのではないかと追加機能について悩み始め、試行錯誤します
気がついてみると作業Aを完了させたのは、約束ギリギリの15日後となってしまいました
どちらの場合も『スケジュールに余裕がある』ために起きた現象です
作業日数が10日間ギリギリであれば、すぐに作業Aに取り掛かったでしょうし、時間に余裕が無ければ、余計な機能は追加せずに指示された内容だけ作業していたでしょう
いずれも余裕時間があったために『人間の心理状態』から起きた現象です
この対策としては、スケジュール作成時に余裕時間を取らないと言うことです
個別プロセスには余裕時間を置かずに、50%の確率でギリギリ完成できる時間を設定します
こうすることによって、作業の後回しや終わっているのに作業をギリギリまで続けるといった人間心理から来るスケジュールの遅れを予防することが出来ます
ですが、トラブルなどでスケジュールが遅れることもあるので、余裕時間は必要です
余裕時間は全体を一括して管理するようにし、各プロセスには置かないようにします
全ての余裕時間は、『クリティカルパス』の一番後ろに置いておきます
参考
クリティカルパスは、プロジェクトの全工程を線で結んだ時に最長となる経路です
他の工程を短縮してもクリティカルパスが短縮しなければプロジェクトは終わらない経路のことです
例えば、クリティカルパスとはこんなケースです
【10日間かかる作業A】と【5日間で終わる作業B】を同時に進めたとします
次のプロセスになる【20日間かかる作業C】を始めるには【作業A】【作業B】どちらも完成しないと【作業C】を始められません
この場合、クリティカルパスは【作業A(10日)→作業C(20日)】です
【5日間で終わる作業B】を短縮しても、全体の日程が短縮されることはありません
各プロセスで遅れが出た場合は、プロジェクト全体(クリティカルパスの一番後ろ)の余裕時間から遅れた日数を削っていくように管理します
そうすることによって、『プロジェクト全体でどのくらいの余裕時間が残っているか』がすぐに分かり、『予定よりも遅れがでたプロセスがすぐにわかる』ようにもなります
プロジェクトマネージメントの専門用語では、クリティカルパスの後ろに置くプロジェクト全体の余裕時間を『プロジェクトバッファー』と言います
今回の作業Aの場合、作業時間は【10日間】、プロジェクトバッファーは【5日間】でした
スケジュール管理はクリティカルパスの管理です!
▼クリティカルパス(チェーン)がどうして重要かがわかります
マルチタスクでスケジュールは遅れる!
チームメンバーに『マルチタスク』で仕事をさせるとスケジュールは遅れます
なぜなら、チームメンバーには『作業の優先順位』がわからないからです
プロジェクトで例えれば、こんな状況です
あなたは、3つのプロジェクトで【それぞれ10日間かかる作業D・E・F】を担当します
順番に作業を始めれば、作業Dは10日後、作業Eは20日後、作業Fは30日後には完成します
しかし、【作業D】を始めてから5日後に【作業E】を始めるように催促がありました
そこであなたは、【作業D】を一旦中断し【作業E】を開始します
さらに5日後、また同じ催促があり、今度は【作業E】から【作業F】へ作業を移しました
各作業を5日間作業して【合計15日間】経ったにもかかわらず、当初10日後には完成する予定だった【作業D】はまだ終わっていません
この段階で作業状況がわかったプロマネの指示により、優先順位に従い【作業D】【作業E】【作業F】の順番で、それぞれ5日間掛けて残りの作業を完成させました
その結果、開始から【20日後に10日遅れで作業D】【25日後に5日遅れで作業E】【作業Fだけは当初予定の30日後】に完成することが出来ました
マルチタスクで作業をした結果、2敗1引き分けでスケジュールが遅れました
チームメンバーは、それぞれの作業の優先順位はわかりません
『メンバーは優先順位がわかっていて、日程調整をしていると思っているプロマネ』
『作業の優先順位がわからずに、指示された通りに作業を進めるメンバー』
この認識の差がマルチタスク作業でスケジュールが遅れるという状況を引き起こします
チームメンバーからはマルチタスクを排除して、一つの作業に集中させる環境を作ること、優先順位を明確にしてあげることで、スケジュールの遅れを予防出来ます
プロマネがメンバーに明確な優先順位を示すことが大切です!
連動したプロセスを管理しないとプロジェクトは遅れます!
プロジェクトのプロセスは予定よりも、早く終わることもあります
早く終わったときには遅れを挽回するため、次のプロセスを早く始めたいところです
ですが、事前準備が不十分で次のプロセスを早く始められないということがよくあります
『遅れるばかりで早く始められない』これではプロジェクトは予定通りには終わりません
この対策は、コミュニケーションによって解決出来ます
各プロセスの進捗を日々確認しながら、次のプロセスが何日後に開始できるかを発信します
必要に応じて1週間前、3日前と次のプロセスへリマインドして準備をさせます
特にクリティカルパス上のプロセスが遅れるとプロジェクト全体が遅れます
プロマネはクリティカルパスの状況を常に把握し、プロセスの連携が無駄なくスムーズに行くようにチームのコミュニケーションを促進しなければいけません
各メンバーが出来るところから自主的に作業を進めていくようになる状況がベストです!
さいごに、プロジェクトが遅れないためにはどうすればよいか?
ポイント
- 各プロセスから余裕時間(バッファ)を取り除く
- 余裕時間は、クリティカルパスの一番後ろに置いて管理する
- マルチタスクを排除して、目の前の作業に集中出来るようにする
- クリティカルパスを管理して、前後プロセスの連携を密にする
メンバーが集中して最短時間で作業を完了させられる環境を作ることが大切です
メンバーの心理も理解し、モチベーションを引き出すこともプロマネの役割になります
風通し良くコミュニケーションが取れているチームでは『何となくプロジェクトが遅れる』という現象は起きませんので、雰囲気作りがプロジェクト成功の絶対条件です!
うまくいかない時は、先人達の知恵をパクって自分のものにしましょう!
本からインプットでプロジェクト炎上がなくなれば安い投資です
それではみなさんの参考になれば、うれしいです
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