PMBOK PROJECT MANAGEMENT

【PMBOK】プロジェクト資源マネジメント|なぜ人的資源が大切なのか?

2023年3月30日

こんにちは、MARCUSです。

『プロジェクト資源マネジメントってなに?』『具体的にどんなプロセスがあるの?』『どんなことに気を付ければ良いの?』

そんなあなたの疑問にお答えします。

本記事の内容

①プロジェクト資源マネジメントとは?

②プロジェクト資源マネジメントの各プロセスと目的

プロジェクトには、人、資金、時間、材料などの資源(リソース)が欠かせませんね。

リソースを最適化し、プロジェクトの目標を達成するためには『プロジェクト資源マネジメント』が必要です。

資源の割り当てや管理、コントロールを適切に行うことで、プロジェクトの進捗状況を的確に把握し、必要な調整を行うことができるようになるためです。

今回は、『プロジェクト資源マネジメントの概要とそのプロセス』についてご説明します。

本記事を読んでプロジェクト資源マネジメントを実行すると『コスト削減、スケジュール管理精度向上、チームのモチベーション向上等の効果により、プロジェクトの成功確率が高くなる』と思いますよ。

この記事は、建設系プロマネ歴10年以上の私@PMPが書いていきます。

プロジェクト資源マネジメントとは?

まずは、PMBOKをベースに『プロジェクト資源マネジメントの概要』をご説明します。

結論からですが、プロジェクト資源マネジメントの大きな目的は『プロジェクトの進行に合わせて必要な人・ものを的確に投入するために行うマネジメント活動』ということになります。

もちろんそれは、プロジェクトを成功させるため!にですね

PMBOKでは、以下のように『プロジェクト資源マネジメント』を書いています。

プロジェクト資源マネジメントは、プロジェクトを成功裏に完了させるために必要な資源を特定し、獲得し、マネジメントするプロセスからなる。これらのプロセスは、適切な資源を、適切な時に、適切な場所でプロジェクトマネージャーとプロジェクトチームが利用できることを確実にするのに役立つ。

PMBOK 9.プロジェクト資源マネジメント

プロジェクトを進めるにあたっては、『作業をしてもらうスタッフ(人的資源)』『その作業のための装置、資材、施設、インフラストラクチャ(物的資源)』がかかせません。

それら資源を「必要な時に」「必要な分だけ」「必要な場所に」、準備・投入することができるかどうかがプロジェクトが成功するか否かの鍵をにぎります。

材料の到着が遅れては、作業が進みませんからね

プロジェクトでは一連のプロセスの流れに沿って作業が進むので、前の作業が終わって次の作業の移るときに【まだスタッフが揃っていない・材料が納品されていない】というようなことがあると、そこで全ての作業が止まり、スケジュールの遅延に直結します。

そういったことがない様に、さまざまな手法を使って人的資源や物的資源をマネジメントする活動が『プロジェクト資源マネジメント』ということです。

1.資源マネジメントの計画:物的及び人的資源を見積・獲得・管理する方法を定義するプロセス

2.アクティビティ資源の見積り:作業に必要な人的・物的資源の種類と数量を見積もるプロセス

3.資源の確保:作業を完了するために必要な資源を確保するプロセス

4.チームの育成:プロジェクトのパフォーマンスを高めるために、チームを改善するプロセス

5.チームのマネジメント:プロジェクトを最適化するために、スタッフのパフォーマンスをマネジメントするプロセス

6.資源のコントロール:物的資源が計画通りに利用できることを可能にし、変更をマネジメントするプロセス

特徴的なのは『チームの育成』『チームのマネジメント』をいうプロセスを見てもわかる通り、プロジェクト資源マネジメントでは、物的資源よりも『人的資源のマネジメントに重点』をおいています。

実際のプロジェクトでは、調達・納期確認さえしっかりとしていれば物的資源が大きな問題となることはほとんどないためです。

プロジェクトによっては、物的資源の確保が難しい場合もありますが。。。

一方、作業を行うスタッフ・チームといった人的資源については注意が必要です。

個人のスキル差やチーム間の連携次第で成果物のパフォーンマンスが大きく変わってきてしまいます

品質、コスト目標を達成して納期通りに成果物を完成させるためには、チームのパフォーマンスが最適化され事前に承認された計画通りに作業を進めることが前提条件です。

集められたスタッフをチームとして機能するための『チームの育成』

パフォーマンスを評価・フィードバックして改善を継続する『チームのマネジメント』

そのような人的資源のマネジメント活動がプロジェクトを目標通りに進めるためには重要になってくるということです。

プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダの方は、資源マネジメント≒人的資源マネジメントということを念頭において計画を進めるようにしてください。

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プロジェクト資源マネジメントの各プロセスと目的

それでは、それぞれのプロセスについて説明していきましょう。

資源マネジメントの計画

資源マネジメントの計画では『人的資源・物的資源の見積り、獲得、活用といったマネジメント方法』を定義します。

具体的には、『資源マネジメント計画書を作成する』プロセスです。

主な資源マネジメント計画書の内容は以下のとおり。

1.資源の特定方法

必要な資源を特定し、定量化する方法のこと。人的資源の場合、作業に必要なスタッフのスキルや人数、作業時間等をどのように計算するのか等の方法を決める。

2.資源の獲得方法

資源の獲得方法に関するガイダンスを決める。内部資源の場合、どの部署のどの責任者に依頼すればよいのか、その時に使う社内フォーマットはあるのか等を確認する。外部からの調達の場合には組織の発注検収方法・手順も確認しておく必要がある。

3.役割と責任、コンピテンシー

プロジェクトにおける各ポジションの個人の責任や割り当てられる役割、権限などを整理する。

コンピテンシーでは、個人に求められるスキルと能力を明確にし、スタッフが必要なコンピテンシーを持っていない場合には、トレーニングや再雇用、スコープやスケジュール変更といった対処方法を決める。

4.プロジェクト組織図

スタッフ、もしくはチーム・グループとその報告関係図を図示する。組織図の詳細さはプロジェクトの規模による。

5.プロジェクトチーム資源のマネジメント方法

チーム資源(人的資源)の配置、マネジメント、最終的な離任を行う方法についてのガイダンスのこと。スタッフの離任時期、方法を規定する場合、どのプロセスでどの成果物が受け入れられたときにどの配置のスタッフを離任するか等を事前に決める。

6.トレーニング

チームメンバーのためのトレーニング戦略のこと。パフォーマンスを最適化するために必要なトレーニングをスタッフのスキルレベルに合わせて立案する。

7.チームの育成方法

プロジェクトチームの育成方法を決める。チームのコミュニケーションを向上させ作業効率を上げるための方策を立案する。

8.資源のコントロール

資源が必要に応じて利用可能であることを確実にする方法。具体的にはいつ・だれが・どこに・何を依頼(発注)するかというような資源獲得の手順と納品までの確認方法、担当者、責任者といったことを決める。

資源マネジメント計画書は、あくまでも方法論を定義する書類です。

誰が何をどう決めるか、その手順や方法を決めるということですね

資源の見積り、獲得、コントロールといったプロセスを誰がおこなっても同じパフォーマンスが確保できるように、各根拠や手順を明確にするという目的で作成されます。

▼プロジェクトマネジメント計画書の書き方については、こちらの関連記事をどうぞ!

【ちょっと役に立つツール】 責任分担マトリックス(RAM)

私の経験から知っておいて方が良い便利なツールを紹介します。

各作業の責任分担を決めようとすると、誰でも一覧表で『①作業②担当者③期限』を決めると思いますが、多くの場合はそこで満足して作業分担を終わらせてしまいます。

しかしいざ作業を進めていくと『担当者を決めたのに、なかなか予定通りに作業が進んでいかない!』というのが誰でも経験するトラブルではないでしょうか。

そこで役に立つツール『責任分担マトリックス(RAM)』をご紹介します。

RAMのポイントは、責任の分担です!

各タスクに対して『①実行責任②説明責任③相談対応④情報提供』といった具合に責任分担を明確にし、その担当者をマトリックスで振り分けます。

①実行責任:Responsible

②説明責任:Accountable

③相談対応:Consult

④情報提供:Inform

プロジェクトの規模や内容によっては、各責任者の他に『各担当者や確認者、承認者』といった責任分担を設けても良いですね。

このツールのメリットは、一つのタスクを複数人で責任分担することです。

【説明責任者】は自分が成果物について会議で説明しなければいけないので、期限が近付けば【実行責任者】に成果物の進み具合や品質を気にするでしょう。

【実行責任者】もわからないことがあれば【相談対応者】にすぐに連絡・相談したり、【情報提供者】に必要な情報提供を依頼することでしょう。

そういった責任分担者間のコミュニケーションを促進することで、作業の停滞を最小限にすることができるのが『責任分担マトリックス(RAM)』です。

困ったときに誰に相談すればよいか、誰から情報をもらえるのかがわかるので、モヤモヤと悩みを一人で抱えずにすみ、作業をスムーズに進めることができるようになります。

一つのタスクの責任を複数人で分担することは『担当者を決めたのに作業が進まない!』という従来のトラブルを予防するのに大きな力を発揮します。

是非、RAMを活用してみてください。

アクティビティ資源の見積

アクティビティ資源の見積りでは、プロジェクトを完了させるために何がどの程度必要になるのかを明確にするため『作業を進めるために必要な資源の種類と数量』を見積します。

事前に必要なスタッフの人数や材料の購入量などがわからないと、プロジェクト全体にかかるコストやスケジュールに合わせて資源を準備することがどうかを検証することができないですよね。

具体的な手順としては、

1.WBS、アクティビティリストを用意する。

2.それぞれのアクティビティに必要な資源の種類と数量を見積する。

3.資源要求事項と見積りの根拠を用意する。

資源は『WBSのアクティビティ単位』で見積しましょう。

あとで見積した資源を資源要求事項の資料上でワークパッケージ単位、WBS分岐単位、プロジェクト全体と集約するのが簡単になるためです。

資源要求事項には、資源の可用性や前提条件等があれば合わせて記載します。

一覧表ではなく、図示したい場合には『資源ブレークダウンストラクチャー』を併用するとわかりやすくなります。

補足資料として、どのようにして資源の種類、量を見積もったのかを明確に理解できるように『見積りの根拠』も必要です。

もし、資源の過不足等によりコストやスケジュールに問題が出た場合、なぜ資源の見積りを見誤ったのかという根拠があれば、次のプロジェクトで同じ間違いを防げます。

1.見積作成をした手法

2.見積作成に使用された過去の情報等

3.見積に関連する前提条件

4.既知の制約条件

5.見積の範囲

6.見積の信頼水準

7.見積に影響を及ぼすリスク

資源の見積りで要求された種類・数量は、その手配直前に最終確認をします。

その際には、見積りの根拠で詳細が検証されることになります。

誰が見ても計算根拠がわかるような資料が必要であることをよく理解しておいてください。

資源の獲得

資源の獲得では『プロジェクト作業を完了するために必要となる人的資源や動的資源を確保』します。

実際のプロジェクトでは、スタッフを迎え入れるっていう場面ですね

内部資源は、各部門のマネージャーから割り当てられるでしょうし、外部資源は調達プロセスを通して手配することになります。

プロジェクト組織図の各担当、責任者欄にスタッフの名前を書き入れ、資源カレンダーで手配したリソースの可用性や納期情報等を管理します。

注意する点は、経済的理由や他のプロジェクトへの割り当てなどの制約条件で必要な資源が確保できない場合です。(確保できても、要求したコンピテンシーを持ち合わせていないスタッフが任命された場合など)

計画段階では、必要な資源が手に入らなかった場合のリスクを考慮するべきです。

スケジュール、コスト、品質、トレーニング計画、その他マネジメント計画にどのような影響ができるかを資源マネジメント計画書で文書化し、ステークホルダーに周知・承認してもらいましょう。

急に資源確保ができなくなった場合にも、変更要求を出し統合変更プロセスを通して、各ベースラインを評価したリスクに合わせて目標変更するようにします。

人的資源の確保にはプロジェクトマネージャーの権限が及ばないことがありますが、必要な資源が無くてはプロジェクトの成功確率が大幅に下がります。

プロジェクトの成否は、プロマネであるあなたの責任です!!

自分が貧乏くじを引かないためにも、『資源の獲得状況に応じて迅速なアクションが起こせるようにリスクマネジメント』してくださいね。

チームの育成

チームの育成は、プロジェクトのパフォーマンスを向上させるためにチームの環境全体を改善させる活動です。

『チームワークの改善、人間関係のスキルとコンピテンシーの向上、スタッフの士気高揚、離職率の低減』などを主な目的としています。

まあ、要は作業してもらうスタッフの働きやすい環境を作りましょう!ってことですね

具体的には、プロジェクトマネージャーやプロジェクト・リーダーが活動のきっかけを作ることが多くなります。

ですが最終的に目指す姿としては『当初はお互いをよく知らなかったスタッフたちが自主的にコミュニケーションしながら、プロジェクトを効率的に進めていけるようになること』ということです。

そうなるような仕掛け、ルール作りをすることがチーム育成の活動です。

チームのコミュニケーションを向上させるために必要なプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーとしての心構えは以下のようになります。

これが全てではありませんが、最低限心がけるべき内容です。

1.オープンで効果的なコミュニケーションを行う

2.チーム形成の機会を創出する

3.チーム・スタッフ間の信頼関係を構築する

4.スタッフ間のコンフリクトを建設的にマネジメントする

5.協業的な問題解決を奨励する

6.協業的な意思決定を奨励する

次に、仕掛け・ルール作りするときに最終的に目指す姿は以下になります。

1.コストを抑え、スケジュールを短縮し、品質を向上させながら、プロジェクト成果物を完成させる能力を高めるために、チームスタッフの知識とスキルを向上させること。

2.士気を高め、コンフリクトを抑え、チームワークを向上させるためにチームスタッフ間の信頼と合意の意識を改善すること。

3.チームが意思決定に参加し、提供されたソリューションに責任をもつように権限委譲すること。それによってチームの生産性が向上し、より効果的かつ効率的な結果を得られる。

それらを達成するためのツールとしては、

1.コミュニケーションを図るためにオンラインや対面での定期的な会議

2.スキルやパフォーマンスを向上させるためのトレーニング

3.個人やチームの評価・報奨

などが挙げられますが、これに関しては正直ケース・バイ・ケースです。

担当したプロジェクトの性質や内容、また集まったスタッフの経験や要望などにより、どんな活動にするべきかについては、プロジェクトマネージャーであるあなたが決める必要が出てきます。

ですが、オープンでフラットにスタッフの声をちゃんと聞いていれば、何がそのプロジェクトにとって最適解なのかはわかってきます。

初めの段階からどんどんスタッフと意思疎通を図るようにしてください。

チームのマネジメント

チームのマネジメントは、プロジェクトのパフォーマンスを最適化するために、チームのパフォーマンスを追跡し、フィードバックを提供し、課題を解決し、さらにチームへの変更をマネジメントするプロセスです。

プロジェクトマネージャーの仕事のうち、大きな割合を占めるプロセスですね!

具体的には作業パフォーマンス報告書からチームや個人の成績を確認し、計画や目標よりもパフォーマンスが良ければ表彰や報奨でやりがいを促進し、成績が悪ければその課題をチームと一緒に洗い出し、解決していくという作業になります。

注意点としては、プロジェクトマネージャーはスタッフの意欲と能力の双方に敏感に対応するスキルや状況に合わせてマネジメントおよびリーダーシップのスタイルを調整する必要があることです。

ただレベルや能力の低いスタッフを特定し話し合うのではなく、どうすればチーム全体のパフォーマンスが効率的かつ効果的に向上するのかという視点で課題解決にあたります。

チームの士気やモチベーションはそのまま成果の良し悪しに直結するので、建設的かつ前向きに課題をチームと一緒に話し合い、自分事として責任ある改善への行動を促します。

そうすることで、チームの結束も強くなり、なおかつ課題解決にもつながるというような一石二鳥のマネジメントスキルがプロジェクトマネージャーやリーダーには求められることになるわけです。

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古典ですが、チームマネジメントを行う上ではやっぱり一度は読んでおきたい名書です。

資源のコントロール

資源のコントロールは、プロジェクトに割り当てられた物的資源が計画通りに可能であることを監視・是正し、確実にするプロセスです。

必要なものがなくては、作業が進みませんからね

プロジェクトの進捗に合わせて、必要な資源が・必要な時・必要な場所に、確実にあるようにすることが求められ、次のようなことを常に監視します。

1.投入した資源がどのくらい使われたかという消費状況を確認すること

2.資源の不足や余剰を適時特定し、対処すること

3.資源が計画とニーズに合わせて使用され、リリースされていることを確認する

4.資源において課題が生じた場合には、適切なステークホルダーに通知すること

5.資源利用に変更が出そうな場合には、その要因を特定対応すること

6.変更の発生時には、統合変更管理プロセスを通してマネジメントすること

どんなに物的資源のマネジメント計画をまとめたとしても、プロジェクトが実行され、その結果を確認・管理をしていけば、多かれ少なかれ課題や問題は発生します。

事後対処とならないように資源の利用状況に目を光らせ、必要資源がないから。という理由で作業の遅れや中断など起こらないようにすることが求められるわけです。

まとめ

本記事の内容

①プロジェクト資源マネジメントとは?

②プロジェクト資源マネジメントの各プロセスと目的

今回は、『プロジェクト資源マネジメント』についてご説明しました。

物的資源の適時投入ももちろん大切ですが、それ以上に人的資源の育成(マネジメント)に重点が置かれているというところがポイントです。

人は、どうしてもその時の自分が置かれている状況や環境によって、仕事へのパフォーマンスが左右されます。感情やモチベーション、やる気によって、調子の良い日、悪い日ってどうしてもあります。

チームとして最大限のパフォーマンスが発揮できるように、動機付けや作業環境を整えるということがプロジェクトマネージャーに求められるスキルです。

資源、リソースの管理というよりは、『プロジェクトチームという組織マネジメント』という方がより的を得たマネジメントプロセスと言えるのではないでしょうか。

それでは、今回は以上です。

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