こんにちは、MARCUS(マーカス)です。
プロマネ初心者の人によくこんな質問を受けます。
コストコントロールって具体的に何をするんですか?何か注意点とかあります?
今回は、そんな質問にできるだけわかりやすく答えていきます。
本記事の内容
その①コストコントロールとは?
その②コストコントロールはここに気をつけろ!
その③コストコントロール成功の秘密!
建設系で16年プロマネをしている私(PMP有資格)が書いています。
目次
その①コストコントロールとは?
まずは、コストコントロールという言葉についてですが、これはそのまま日本語に直すと『費用を管理する』ということです。
『費用=コスト、管理=コントロール』ですからね
ちょっと当たり前すぎるので、もう少しプロマネっぽい言い方に変えますと、コストコントロールとは『コストベースラインへの変更をマネージメントする』と言うことになります。
✔ 一気にわかりにくくなったので、もう少しかみ砕いて、、、
プロジェクトでは『目標を達成のために承認された予算』があります。これを『コストベースライン』と言います。
全ての作業が決めた通りに進んでくれればいいんですが、プロジェクトではそうもいかないことがほとんどで、予想していなかった作業の遅れやトラブルが発生します。
・お客さんからの変更依頼。(多くの場合は、ほぼむちゃブリ)
・スタッフの退職などによる欠員。外部業者の納品遅れ。
・作業ミスや設計ミスによる品質トラブル など
目標達成の障害となるトラブルには対処しなければなりませんが、それらに対応すると『プロジェクト開始当初に決めた計画が変わってしまう可能性が出てくること』があります。
もし、この変化が『予め決めた予算(コストベースライン)に関わる変更』である場合には、決められた予算内でプロジェクトが完了するようにその変更(問題やその対応)を管理する必要がでてきます。
プロジェクト開始時に、品質・費用・納期などの目標を設定しましたよね
このあらかじめ決めた予算目標(コストベースライン)への変更をマネージメントすることを『コストコントロール』と言います。
✔ どうして『変更の管理』が必要なのか
プロマネ初心者に「コストコントロールってなに?」と聞くと、『どれだけ費用や資金を使ったかを確認すること』と答える人がよくいます。
間違ってはいませんが、100%の正解でもありませんね
プロジェクトマネージメントのそもそもの目的は『QCD目標(品質・費用・納期)内でのプロジェクトの完了(成功)』です。
どれだけ費用を使っているのかという確認も大切ですが、それだけでは事後確認です。いつの間にか気がついたら「もう予算がない」なんてことにもなりかねません。
ですので、プロジェクトの予算を守るためには計画になかった予算を使う前に『使ってよいのかどうかを事前に確認する』ということがとても大切な作業をなってきます。
✔ 目標達成のためには、『事前予測とその管理』がもっと重要!
あたり前と言えばそうですが、結構出来ていない場合が多いですね。
予算には限りがありますので、トラブルが発生したときに後先考えずに費用を使っていると、予定していた予算内で完了することは難しくなります。
トラブルの対処にかかる費用を算出して、『事前』に使って良いかどうかを判断しなければいけません。
ここで大切なのは、事前に判断するということです。
『変更』を『事前に確認・判断』することが『コストベースラインへの変更を管理する』ということですので。
✔ できれば、その他のリスクも想定してみよう
もう一点重要なことは、予算の割り当てられているプロセスで『コストベースラインの変更になりそうな他の『リスク』を同時に考える』ことです。
作業の中盤で大きなトラブルが発生してしまった場合は、なんとか作業を遅らせないようにと焦りが出てしまい、多少大きな費用でもコストベースラインの変更を比較的簡単に承認してしまうものです。
ですが、作業終盤にもし同じような追加で費用がかかるトラブルが発生してしまうと、すでに作業中盤で大きな費用を使ってしまっているので、もう一度トラブル対応回す予算が無い!ということになりかねません。
ポイント
作業中盤のトラブルで追加費用がかかるとわかった時に、プロジェクト全体の作業を見通して他にも同様のトラブルが発生するリスクがないかを想定しましょう。
もし、今後も追加費用がかかるリスクが想定される場合には『そのリスクが排除可能かどうか』『出来ない場合には、どの程度の費用が必要か』を算出してから、プロセス全体でかかる追加費用を想定しておくとより安心ですね。
✔ コストコントロールは、コストベースラインの変更管理
コストコントロールとは?について、以下にまとめます。
①コストコントロールとは『コストベースラインの変更を管理すること』
②コスト目標の達成には『事前の予測と管理』が重要
③変更の承認をするときには『その他のトラブルリスクを洗い出す』
大切なので重ねて言いますが、はじめに決めた予算を守って目標を達成するために、追加費用を『使う前に管理することが重要』ということですので、忘れないでくださいね。
その②コストコントロールは、ここに気をつけろ!
コストコントロールで予算をいくら使ったかの確認だけではNGと説明をしましたが、それでもやはり予算の消費状況の確認は重要です。
『予算の消費状況の確認方法』で注意点がありますので、そちらについてお話します。
✔ 予算消費の確認と作業成果の分析は必ずセットで行う
ありがちなのは消費状況を確認するときに『スケジュール(日数)の進捗だけをしてしまうこと』です。悪くはないのですが、もう一歩踏み込んだ確認をすることをオススメします。
作業成果(成果物)の分析を同時に行うようにしてください
日程の確認だけでは、実際の『作業の進み具合がわからない』ためです。
成果物で進捗確認をすると『実際の進み具合』がわかりますし、最終的に作業完了までの予算を事前に予測することも合わせてできて一石二鳥です。
✔ 日数消化の確認では、作業の遅れは見つからない
【3週間かかる作業(予算:30万円)が開始後、1週間過ぎた】とすると、あなたならどのように予算の消費状況を計上しますか?
予定日数の1/3が過ぎたので、30万円✕1/3=10万円でしょうか
「そんな訳ないよ、そんな確認では実際の作業の進み具合がわからないよ」と思われるでしょうか?
大規模なプロジェクトであればあるほど、いちいち全ての作業確認するのが面倒なので『スタッフからの報告と日数消化状況だけ』で予算を計上してしまうことがありがちです。
しかしそれでは実際の作業の進み具合がわかりませんので、消化日数を基準にして予算の消化額を計算してしまうと、あとで作業の遅れを挽回するために予想もしていなかった追加費用が発生してしまう危険性が出てきます。
✔ 遅れている作業は、成果物で判断する
作業の遅れは、実際に自分で目で成果物を一つづつ確認することでしか把握することはできません。
面倒かもしれませんが、どんなプロジェクトでもこれが現実ですね
残念ですが、スタッフからの報告だけで進み具合を判断するのも進捗を見誤りますので危険です。
「まだ挽回できるから」と作業の遅れを軽く見て報告していないという可能性もありますし、その遅れに作業担当のスタッフでは気づかないトラブルのリスクがあるかもしれません。
だれでも自分に都合の悪いことは、なるべく隠したいですからね
✔ 成果物確認で最終予算(費用)の予測も事前にできる
成果物ベースで進み具合と予算の消化状況を確認していると、最終的にいくら予算がかかるかを早めに予測できます。
こんな状況の場合、どのように進捗を判断しますか?
①成果物ベースの進み具合では、30%の進捗状況
②作業日数ベースでは、すでに50%の日数を消化してしまっている
③この状況で計画予算の40%をすでに消化している
①の作業進捗30%が100%になるには、作業日数で計画の166%かかる。
③で現状予算を40%消化してしまっているので、作業完了100%時には計画の133%の費用がかかってしまう計算になる。
まあ、ほぼ絶望的な状況ですね
次の工程で挽回可能であれば、このままでもOKかもですが、NGの場合には更にスタッフ増員や外注などで遅れを挽回するために追加費用が必要になってきます。
ただ作業日数ベースだけで進捗を確認していると50%の進捗で予算40%を消化しているだけなので、問題なく進んでいるように見えますよね
ですが、成果物ベースでの本当の作業進捗を確認していれば『計画よりも133%も費用がかかるってことが、スケジュール進捗50%の段階でわかる』ということなんです。
早くわかれば追加予算の準備や対処する時間があるので、致命的なトラブルを事前に防ぐことにつながります。
何事も早め早めの対応が成功への鍵ですね。
✔ 細かい成果物設定が必要な場合もある
ただ、毎週や毎月という頻度で作業の進み具合を成果物で確認しようとすると、それなりに成果物を事前に細かく設定しなければなりません。
成果物の数が少なかったり、アウトプットの頻度があまりに長いと実際どのくらい作業が進んでいるのかがわからなくなるからです。
ですので、ちょっと面倒ですが『プロマネの人は外部用とは別に内部用に成果物のアウトプット頻度とスケジュール』を用意しておいてください。
3ヶ月後に外部に提出予定の成果物について、2週間後や1ヶ月後の成果物の出来高を確認頻度に合わせて、事前に決めておくという感じです。
これもあたり前のように聞こえますが、出来ていないプロジェクトの方が多いので、コストコントールを成功させるためにはオススメです
重要なので繰り返しますが、『予算消費の確認と作業成果の分析はセットで行う』ということが大切ですので注意してくださいね。
その③コストコントロール成功の秘密!
プロマネを14年続けてきた私が、経験から導き出した有料級のコストコントロール成功の秘密をシェアします。
結論ですが、ズバリ!『コンティンジェンシーフィー(予備費)を用意する』ということです。
何だそんな事かぁ、と言わずにまずは聞いてくださいね
まずは、予備費について簡単に説明しておきましょう。
コンティンジェンシーフィー(予備費)はその名前の通り、『プロジェクト開始段階では使用の予定の立っていない予備予算』のことで、大きく2種類あります。
1⃣ 既知の未知(Known Unknown)
既知の未知は『追加の予算が必要になりそうな要因があることがすでにわかっているが、実際に起こるかどうかはまだわからない』というタスクに対して準備しておく予備費です。
こういったトラブルのリスクへの対処方法は『受容』と言います。
トラブルになりうる脅威は認めるが、その影響度が弱く優先度が低いと判断した場合に積極的には対応せずに受け入れるという対処方法です
既知の未知として予備費を準備しておき、優先度の低いトラブルが発生したらその都度事後対処するといった具合です。
脅威となるリスクがわかっていますので、その対応に必要な費用を事前に計算しておけば、いくら予備費を用意しておけば良いかはわかるでしょう。
2⃣ 未知の未知(Unknown Unknown)
未知の未知は『今現在は全く起こることが予測できていない未知の脅威』に対する予備費になります。
当然予測できていないトラブルですので、対処するためにどの程度費用がかかるかは起こってみるまでわかりません。
現実的には、プロジェクトの全体予算の〇%という形で予備費を準備しておくことが多いでしょう
プロジェクトの事前検討が十分であれば、未知の未知についてはプロジェクト予算の3~5%程度というところです。
✔ リスクアセスメントで予備費を確保
『既知の未知』『未知の未知』どちらでも、コンティンジェンシーフィー(予備費)は『トラブルの対処に対して準備される予算』です。
予備費を適切に準備するためには計画段階で事前に『リスクアセスメント』を十分に行うことが大切になってきますので、まずは、既知の未知となる予備費を算出するために『計画開始から終了まででトラブルになりそうなリスク』を全て洗い出してください。
ブレーンストーンで項目を列挙して、起きる可能性と起きたときの影響度でリスクとなる項目に優先度をつけてくださいね
起きるとプロジェクトへの影響が大きな『優先度の高いリスク』に関しては、必ず事前に手を打っておいてくださいね。
優先度の高いリスクが起こってしまうと、コストコントールどころかプロジェクトが失敗する可能性がでてきますので。
予備費で対処するのは、受容することのできる優先度の低いリスクです。
受容で対処すると決めたリスクに対して、それぞれに必要な費用を算出して既知の未知への予備費を用意しましょう。
そうするれば、『無駄の少ない適切な予備予算』となります。
✔ 大なり小なりトラブルは必ず起こる
どんなに入念な事前準備をしていても、プロジェクトでは必ずトラブルは起きてしまいます。残念ながらそれが現実です。
トラブルは品質の問題に関わることが多いですが、その対処方法についてはチームで知恵を出し合えば解決策は比較的容易に見つかるものです。
しかしその時、品質問題の対処に費やされる『時間』か『費用』が問題解決の制約となってくることがあります。
『時間』の問題については、人員を増やしたり外部へ仕事を依頼するなどの対応で解決できますが、その時にも追加で費用がかかります。
つまりは、コンティンジェンシーフィー(予備予算)さえあれば『時間に関する制約は解決できる』と言うことがいえますね。
時間をお金で買う、というやつですね
✔ コンティンジェンシーがないとプロジェクト総崩れ
ここまでで、『プロジェクトにはトラブルがつきもの=それに対処するためには予備費用が必要』ということがわかったのではないでしょうか。
ではもし、予備費用がなかったらどうなるでしょうか。
小トラブルには対処できるかもしれませんが、追加費用がかかるような中・大トラブルには、打つ手なしです。
①品質トラブルが発生しても予備予算がないので追加人員の手配や調達品の購入ができずに、問題解決に時間がかかる。
②時間をお金で買うようなトラブル対応もできずに、スケジュールが遅れる。
プロジェクト大炎上ですね、想像もしたくありません
もし、費用を使わずに問題に対処しようとすれば品質に妥協しなければいけないことが出てくるでしょうし、悪い場合には品質目標の達成が難しくなってしまうこともあります。
こうなっては、プロジェクトは総崩れと言わざる得ません。
品質・コスト・スケジュールは、お互いに影響し合う関係にあります。
その中にあって、一番用意しやすいのは『予算』だと私は思います。
以上のことからも、私の経験から『コンティンジェンシーフィー(予備費)を確保する』ということは、『コストベースラインの達成に直結する最重要事項』だと断言できます。
✔ コンティンジェンシーは作れる
いやいやそもそも予備費なんて予算はもらえないよ
なんていう人もいると思いますが、予備費は作れますので安心してください。
承認された予算の中から外部調達などへの発注があると思いますので、全ての見積書に対して価格低減の交渉をしてください。
そして1%でも2%でも発注金額を下げることができれば、その差額を予備費としてプールしてください。
価格交渉が苦手な人は、社内調達部門に依頼したほうが良いですね
いずれにしろ、承認された予算の中から少しづつ”余り”を作って、それをプールし自ら予備費を捻出するということです。
『ちりも積もれば山』となりますので、初めから無理!と諦めずに、『コンティンジェンシーフィーがなければプロジェクトは失敗する』くらいの気概で臨機応変に知恵を出していきましょうね。
まとめ
本記事の内容
その①コストコントロールとは?
その②コストコントロールはここに気をつけろ!
その③コストコントロール成功の秘密!
今回は、『コストコントロール』について書いてきました。
コストは、品質・納期とともにプロジェクトの3大管理項目の一つです。
コスト管理に失敗すると、ほかの2つが目標を達成しても33%は成功未達という結果になってしまいます。
コストを含めた全てのプロジェクト目標が達成するよう、今回ご紹介したコントロールの方法や成功のコツを実践してみてくださいね。
それでは、今回は以上です。